君を愛す ただ君を……
「夜道は危険だから。送っていくってば」

岡崎さんが車のキーを手の中で、遊ばせながら近づいてきた

「ああもうっ。わからない人ね」

私は鞄の中から携帯を出して、岡崎さんの眼前に突き出した

「携帯で男を呼び出すからいいの。さっきどこから出てきたか…覚えているわよね? さっきの男じゃ、満足しなかったの。だから今夜はもう一人、誰かと…って、えっ?」

私は岡崎さんに抱きしめられた

「ちょっと、何をしているの?」

さらにぎゅっと、強く抱きしめられた

「今夜はもう一人誰かと…って考えてるなら、僕でいいじゃない」

「何…言っているの? やめてよ。忘れられない人がいるくせに…」

「10年も前の話だよ」

「なら…なんで、写真立てを大切に飾ってるのよ。さり気無く伏せたつもりでしょうけど…その行為こそ、まだ忘れられないっていう証拠なの。やめてっ…誰かを真剣に思っている男とは寝ないのよ」

私は岡崎さんの腕の中で、もがいた

「遊びで軽く付き合える男じゃなきゃ…」

私は岡崎さんに唇を奪われた

10年も女性と触れあっていない男とは思えないほど、甘くて熱いキスだった

思わずもっとおねだりして、キスをして欲しくなるほど、糸を引くキスだ

私は岡崎さんのスーツにしがみ付いた

「軽い遊びがいいなら…僕が付き合うから。今夜はここに泊まりなよ」

岡崎さんがまたキスをした

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