君を愛す ただ君を……
私…寝てた?

重たい瞼を持ち上げると私は、まわりを見渡した

そうだ…私、岡崎さんに抱かれたんだ

シングルの布団の中で、満たされた身体の感覚に満足をする

気だるい身体が心地よい

少し熱を持っている下半身に、思わず口が緩んでしまう

狭い布団の中で、私は岡崎さんの体温を探した

温もりはあるのに、物体はなかった

視線を動かすと、岡崎さんは棚の前に座って写真立てを手に持って見つめていた

「忘れるのに10年もかかったよ。ごめんな…ごめん」

岡崎さんが、写真立てを抱きしめた

上半身裸で、写真立てを抱きしめる岡崎さんに、私の心はなぜか苛ついた

だから…言ったじゃない

誰かを大切に思っている男は嫌だって…他の男のところに行くって言ったのに…

写真の中にいる女性に、謝るくらいなら…黙って私を見送れば良かったのよ

そんなにその女性が好きなら、さっさと奪い行けばいいでしょ!

私は寝がえりを打ったふりをしながら、岡崎さんに背を向けた

岡崎さんは写真立てを棚に戻すと、シングルの布団で横になっている私の髪に触れた

やめてよっ

触らないで…写真の女性が好きなんでしょ?

5分くらい私の髪や頬に触れた岡崎さんが、立ち上がるとユニットバスのほうへと歩いて行った

パタンとドアが閉まると、私は起き上がった

脱ぎ捨てた下着とワンピースをかき寄せると、急いで着替えて、岡崎さんのアパートを飛び出した

この人と、私は根本的に合わない

もう、会っちゃいけないと思う

岡崎さんは真面目すぎる

エッチは上手ですごく気持ちよかったけれど…遊ぶ相手にしたらいけない人だ

< 218 / 507 >

この作品をシェア

pagetop