君を愛す ただ君を……
すぐに捨てるんじゃなかったの?

くしゃくしゃになったメモを、私は広げながら自問した

無理よ…捨てられるわけないじゃない

ズルい人だわ

どうして…貧乏教師で、すぐに怪我をするような男なのに、なんでこんなにも私の心を惹きつけるの?

「私はね…お金持ちで、お洒落な男が好きなの。一流レストランと食事をして、高級なワインを飲んで…一晩だけで何十万もするようなホテルの部屋で、適当に愛されるのが好きなのに」

ダブルベッドから抜け出すと、岡崎さんのメモを持ったまま、ガラス窓におでこをコツンとぶつけた

下着姿が、外の夜景と一緒にガラスに移った

乱れた髪が、物凄く己を惨めな気分にさせた

ベッドに寝ている男は、熟睡しているようで、腕を布団の上に出したまま、イビキをかいて寝ていた

好きな人がいるんでしょ?

忘れられない人が……10年って言ってたっけ?

もうそんなに愛し続けてる人がいるなら、そっちに行けばいいじゃない

なんで、私に構うのよ

『僕は本気だよ』

やめてよ…本気って言わないで

私、そういうの嫌いなんだから

『好きだよ』

やめてってば

私は耳を塞ぐと、首を左右に振って、岡崎さんの声を頭の中から追い出そうとした

お願い…私には無理なの

できないのよ…真面目すぎるのよ、岡崎さんと私は違う過ぎるの

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