君を愛す ただ君を……
私が電話切って、30分後に、登録したばかりの岡崎さんから電話がかかってきた

『僕の思う高級なホテルと軽部先生がいる高級なホテルの答え合わせをしない? 今、ロビーにいるから。降りてきて』

岡崎さんの電話を聞くなり、私はスイートルームを飛び出した

エレベータに駆け込んで、一階に降りる

フロント前にあるソファにいる人間を一人一人確認していった

心臓がバクバクした

居なかったどうしよう

ホテルなんて、あちこちにある

高級なホテルなんて……選択肢が多すぎだ

しかもどこから『高級』というレベルになるか…なんて個人の価値観で差が出てくる

これで岡崎さんが迎えに来てくれたホテルと、私がいるホテルが違ったら…すごく馬鹿みたい

そうよ

いるわけがない

だって、『高級』なホテルっていくつもあるもの

足を延ばせば、いくらだってある

私はロビーにある一人掛け用のソファに尻を落とすと、はあっと息を吐き出した

期待するほうが、どうかしてる

岡崎さんが来てる…なんて、思うほうがおかしいのよ

「どうして途中で、探すのを辞めちゃうの?」

背後で声がすると、大きな手で目隠しをされた

「だーれだっ」

「……岡崎さん」

「ピンポーン! 正解っ。大正解。見事、正解した貴方には……」

岡崎さんがひょこっと私に顔を出した

「私には…?」

「豪華ホテルの一泊券を差し上げまーす」

岡崎さんがホテルのカードキーを私の前でチラつかせた

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