君を愛す ただ君を……
大樹はすごく優しい人だった

仕事の急なシフト変更や学会、接待という私の仕事の理由で夜が潰れて、デートのキャンセル…なんてしょっちゅうあった

突然のキャンセルにも、大樹はいつも寛容に受け入れてくれる

私のほうが、浮気してんじゃないかって思われたらどうしようって不安になるくらい

もちろん、浮気なんてしてない

今までの私の生活から見たら、一人の男性に縛られて生きてるなんて有り得ないって感じなんだけど

そりゃあ…愁となら真面目な恋愛ができるかもぉ…みたいな気持ちはあったけど、だからって好きっていう感情があったかって聞かれると、自信を持って頷けない私がいる

愁とは、父の紹介で見合いをしただけ

結婚して、妻になるには、それなりに将来の見通しがあったから

付き合おうって思っただけ

実家が病院で、愁自身も優秀な医師の卵

そんな人と出会うチャンスに恵まれておいて、結婚をしないなんて有り得ないって思ってた

見事に、すぱっと断られて頭にきたけど

振り向かせようと、手を尽くした時期もあった

でも愁の涼宮主任を見る目が、愛に溢れてて、入り込めないって思った

愁を振り向かせようと必死になっているときだって、私は普通に別の男とホテルに行ってた

適当に遊んで、切り捨てていく男たちは大勢いて…いったい、月に何人と付き合ってるの?って突っ込まれたら、答えられないくらいだ

だから、「仕事だから」という理由で、デートをキャンセルするたびに、私はついつい「浮気している」と思われているかも…なんて頭の隅で考えてしまう

ほんとに仕事だし、今は大樹以外の男となんて考えられない
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