君を愛す ただ君を……
こんなに自分が変わってしまうなんて、不思議でならない

人って、変われるんだね

好きな人に愛されるって、こんな心地が良くて…こんなに素直になれるなんて思わなかった

今は凄く幸せで、充実してる

「ごめん。本当にごめん。急に飲み会が入っちゃって」

私は病院の非常口の扉の前で、携帯に向かって謝った

『いいよ。僕もついさっき大学の頃の友人から連絡があって…飲みに誘われたんだ』

「そ、そう…じゃあ、私とのデートは断る予定だった?」

『もちろん、友人たちの誘いのほうを断ったよ。ただメールで待ち合わせの場所と時間が送られてきてたから。ちょっと顔を出すつもり』

そうよね

私のデートより、友人を優先にしてたら今夜、エッチのときに首を絞めてたわ

「本当にごめん。お世話になった教授からの誘いだったから…」

『あまり飲みすぎないでよ。僕もたぶん飲むから、迎えに行けないよ』

「うん。デート、ごめんね。いつも私ばっかり……」

『優秀な女医さんだからね。僕は誇りに思っているよ』

「ありがと」

私は携帯を切ると、非常口の扉に寄りかかった

ねえ…知ってる?

私、優秀な女医じゃないのよ

優秀って思われているだけで…私が優秀に見られようと努力して演技してるの

教授や助教授に媚を売って、病院では上司にちょっとした胸の谷間をサービスして…

少しのミスは、色気と笑顔でカバーしてきたの

女の看護師から受けが悪いのは知ってる

でもそれ以外に、やり方を知らないのよね

馬鹿な女って見られないために片ひじを張って、自分を大きく見せて…何もしなくても可愛がられる女を見て、苛々しちゃって

「私って小さい女ね」

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