君を愛す ただ君を……
「あれ? 放課後にジャージを使うって?」

あたしは首を傾げた

「ああ……陸上部にね。入部した」

「ええ? だって」

一年のときは、何度も勧誘がきても絶対に断り続けてたのに

どうして急に?

もしかして大ちゃんのせい?

「大ちゃんが、何か言った?」

「もう言いまくりだよ。でも決めたのは俺だから」

「バイトは?」

「ああ、それ…さっそく従兄に言っただろ! それをネタに脅されたんだぞ」

「ご…ごめん。ついぽろっと。でもしぃちゃんには言ってないよ」

越智君が、にっこりと笑った

「別にいいよ。バイトって言ってもさ。親父の仕事の手伝いだから。いつでも辞められるから」

「部活…いいの? 大ちゃんになら、あたしが言うよ?」

「言っただろ。決めたのは俺だよ」

あたしはゆっくりと立ち上がると、一歩一歩ゆっくりと階段をあがった

越智君もそれに合わせて、隣で歩いてくれる

もしかして…越智君、あたしと大ちゃんの話を聞いちゃった?

話しているときに、目が覚めたの?

聞いてみたいけど…聞けない

もし聞いていたら、あたしの気持ちを越智君に知られたことになる

それにあたしの持病を知ったことになる

「あ、しぃちゃんが怒ってたよ? 昨日、送ってくれなかったって」

「もしかして涼宮に電話してきたのか?」

「うん。2時間くらいずっと話してた」

「…たく。何やってんだよ。俺にも11時くらいに電話してきて、散々文句を言ってた」

越智君が、額に手を当てると呆れていた

そう…この他愛ない会話がいい

何も気にせず、楽しく越智君と話ができればそれでいいの

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