君を愛す ただ君を……
『お客様のおかけになった電話番号は……』

聞きなれたアナウンスを耳にすると、私は携帯の通話を切った

大樹が電話に出てくれない

「電話に出てくれないから、アパートまで来ちゃったじゃない」

私はむすっとしたまま、大樹の部屋の前に立った

小窓からは電気が漏れている

時折、人影が動いている

大樹は絶対にこの部屋にいる

私は呼び鈴を押すと、大樹がドアを開けてくれるのを待った

ドアに近づく足音が聞こえると、少しだけドアが開いた

「何?」

大樹が怖い顔をして、私を睨んだ

「私、怒ってるんだけど」

「僕も怒ってる。越智と婚約をしているのに、なんで僕と付き合ったの? 本当に遊びのつもりだったんだ。それに陽菜も知ってるの? 君と越智が婚約してるって? 結婚するまでの間、可哀想だから付き合ってるなんて……」

「ちょっと待ちなさいよ」

「どうして越智なんだよ。いつもいつも、何かしら越智に阻まれる。陽菜のときも…彩香も」

「それ…私にも言えることよ。どうして涼宮主任なのよ。みんな、私が気になる男は全員と言って良いほど、涼宮主任を選ぶわ。大樹もそうでしょ? 実際に涼宮さんと7年間も婚約中だったんだから。私、越智先生とは見合いはしたわ。それだけよ。見合いしたその日のうちに、断りの電話をもらってるの。越智先生、本人から」

大樹が「え?」と驚きの声をあげると、ドアを大きく開けてくれる


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