君を愛す ただ君を……
放課後、あたしはジャージに着替えてからコートを取りに教室に戻った

「あれ? 陽菜、どうしたの? ジャージなんか来て」

教室にいたしぃちゃんが、席を立つと声をかけてきた

「あ…陸上部のお手伝い」

「え?」

しぃちゃんの眉がぴくっと動いた

「愁も入部したんだよね? 陽菜も? 体育の授業、いつも休んでるのに」

「あ…違うの。あたしは、大ちゃんの帰りを待つついでっていうか」

「大ちゃんの帰り?」

あたしは片手を振りながら、顔が上気するのがわかった

勝手に目が泳いでしまう

嘘をついてるわけじゃないけど…なんか後ろめたく感じてしまうのは、きっとあたしが越智君を好きだからなんだと思う

「新任の先生、ほら岡崎先生! あたしの従兄だから。ウチに居候してて」

「付き合ってるの?」

「え?」

「だって、待つついで…ってまるで一緒に帰るみたいな言い方だよ?」

「あ…えっと」

付き合ってない

ただ、あたしの心臓を心配しているだけのこと

でもそう言えない

口が裂けても、持病のことは言えないよ

「あ? 涼宮、まだ教室にいたのかよ。ほら、行くぞ」

あたしの教室の前で足を止めた越智君が、声をかけてきた

「え? あ…うん」

「しぃ、遅くなると思うから、先に帰ってろ」

越智君が、しぃちゃんにも話かけた

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