君を愛す ただ君を……

「ああ…いいのいいの。ウチに来れば?って言ったのは愁一郎だから。高校に毎日通って、帰宅してからは、愁一郎が勉強を見てるよ。医大に入るって言ってた」

「あの子…馬鹿なのよ?」

「そんなことないよ。中間試験、何位だったと思う? 学年で5位! 寝る間も惜しんで、毎日勉強してる」

「5位? あの子が?」

「不良グループとも全然ツルンでないよ。きっぱり別れたって話してた」

「信じられない」

彩香さんが、頭を振った

大輔君、すごい頑張ってる

大ちゃんの死が、自分の責任だってすごく苦しんでる

そのせいでお姉さんの幸せを奪ってしまったことに、深く心を痛めてるんだよ

自分にできることは何かって必死に悩んで、愁一郎に相談もしてた

それなら、命を助けられるかもしれない職業についたらどう?って愁一郎が提案して、頑張ってる

髪の毛も黒に戻して、ピアスも外して、以前のような面影なんて全然ないんだよ

街中であっても、気付かないくらい

普通の高校生に戻ってる

大ちゃんが想いが、大輔君に通じたんだね

「料理も腕も凄くてねえ。あたし、主婦になれるのかな?って思わず自信をなくしそうなくらい上手なんです」

「あの子は、一人で大きくなったようなものだから。どうせ父は、大輔の面倒なんて見てなかっただろうし。家事はたぶん、慣れてると思う」

「今度、遊びに来てください。大輔君の手料理を食べたら…もうそこら辺のレストランには行けませんよっ」

「考えておく」

彩香さんがにっこりと笑ってくれた

「大輔には、酷いこと言いっ放しだったから。謝りたい気持ちもあるのよ。頑張って更生してるなら、姉として応援してあげないとね」

彩香さんが目に涙を浮かべると、鼻を啜った

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