君を愛す ただ君を……
あたしは夜中に目が覚めた

愁一郎、妊娠したこと、どう思っているんだろう

あたしは布団の中でお腹を擦った

嬉しいのか、それとも怒っているのか

さっぱりわからない

仕事が終わって家に帰ってきたときも、帰宅途中に買ってきたと思われる花束を「おめでとう」と言って渡してくれたけど

それが、愁一郎の本心からの言動だとは思えない

だって、愁一郎は妊娠を望んでなかった

あたし、一人だけ…愁一郎との子供を望んでた

愁一郎はあたしの身体にかかるリスクを恐れて、妊娠を嫌がってる

その考えが、変わったとは思えない

あたしは寝がえりを打って、愁一郎のほうに向いた

あれ? 愁一郎がいない

暗闇の中でも、愁一郎が隣で寝ていないくらいはわかる

あたしは手を伸ばして、愁一郎の枕に触れた

「冷たい」

枕にもシーツにも、愁一郎の温もりはなかった

一緒にベッドに横になったのに

もうしばらくベッドには、入ってないみたい

あたしは身体を起こすと、ベッドの脇に置いてある棚に手を伸ばした

携帯の液晶をつけて、時間を確認する

深夜1時を少し過ぎたところだった

どうして、愁一郎がいないの?

ちょっとトイレに立ったって感じじゃない

なら、どうしてここにいないのだろう

あたしはそっとベッドから足を出すと、厚手の靴下をはいて、そっと寝室を出た

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