君を愛す ただ君を……
ベッドに横になると、あたしは瞼を閉じた

『今までは、俺が人一倍頑張ったり、努力したり、我慢すればどうにかなる人生だった』

愁一郎の言葉を思い出す

確かにそうだね

高校生のとき、命が尽きるまで愁一郎と一緒に居たいってあたしが願った

それを聞いていた愁一郎は、お父さんに殴れても、陸上を再会してあたしと一緒にいることを選んでくれた

今までの成績の順位は落とさないって両親に約束をして…夜も寝ずに、勉強してたよね

本気で学年1位を狙ってた

あたしと別れるって決めてくれたときも、愁一郎一人に我慢させちゃったよね

母親なんて無視すればいいって言う愁一郎に、あたしは愁一郎の母に隠れてまで付き合いたくないって言っちゃって

喧嘩したけど、結局愁一郎が折れてくれた

喧嘩になると、いつもそうだったよね

カッと血が上って愁一郎は怒鳴るけど、最後はあたしの意志を尊重してくれてた

そう考えると、あたしは……いつも愁一郎にばかり無理させてたのかな?

ゆっくりと寝室のドアが開くと、愁一郎が戻ってきた

そっとベッドの中に愁一郎が入ると、あたしを抱きしめてきた

「…どうしたの? 愁一郎の身体、冷たいよ?」

あたしはわざと眠たそうな声で、愁一郎に聞いた

お父さんとの電話は、聞いてないことにしたほうがいいと思うから

「ん? ごめん。起こしちゃったか?」

「ん、どうしたのかなって思って」

「目が覚めてさ。深夜番組に見てたら、寒くて…戻ってきた」

愁一郎らしい嘘のつき方だね

あたしは、愁に寄り添うように身をよせた

「あたし、堕ろそうか?」

「産めよ。産みたいんだろ?」

「うん…でも、愁一郎の気持ちは?」

「俺も、陽菜の子の顔を見てみたい」

愁一郎があたしの額にキスをした

「ありがとう、愁一郎」

< 261 / 507 >

この作品をシェア

pagetop