君を愛す ただ君を……
もしかしたら、あたしの妊娠って愁一郎が危惧し過ぎていただけなのかな?

そんなに危険なモノじゃないのかもしれない

愁一郎がお父さんと話をして、あたしの身体にそんなに負担がかからないってわかったのかもしれないなあ

あたしは愁一郎の腕の中で、深い眠りに落ちた

子供が産める……7、8カ月後には自分の子に会えるんだ

明日は大学病院の産科に行こうと、あたしは夢の中で誓った



一通りの検査を受けたあたしは、産科の先生と向かい合って座った

ナース姿のあたしに、産科の先生はすごく険しい顔をしている

「越智先生はこのことを知ってるの?」

「はい…知ってます」

「何て言ってた?」

「え?」

「この妊娠について、賛成してるの?」

「は…はい」

あたしは先生の質問に、眉に力を入れる

何か問題でもあるのだろうか?

だって、愁一郎は産んでいいって言ってくれた

それって、あたしが産んでもリスクがないって判断したからじゃ……

「非常に言い難いけど、子供は諦めたほうがいいと思いますよ」

「え?」

「あなたの身体だと、なんの問題もなく妊娠中を過ごし、何の問題もなく出産できる可能性は残念だけどかなり低いの。まだ堕ろせる最終期限まで時間はあるわ。もう一度、越智先生と話をして……」

「産む、産まないは陽菜の判断に任せます」

背後から聞こえてきた低い声に、あたしは驚いて振り返った

白衣姿の愁一郎が、産科の先生の顔をまっすぐに見つめていた
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