君を愛す ただ君を……
そうだよね

子供には母親が必要だもん

あたしがいないなら、他のママを探すよね

嫌だな

それって…愁一郎があたし以外の人に愛情を注ぐってことでしょ?

あのマンションで、あの寝室で…あたし以外の人を妻にするなんて嫌だ

でもあたしが子供を産んで、子供だけが助かった場合はそうなるんだよね?

あたしも子供も助からなかったら?

愁一郎は、身軽な身体で次の恋愛にいける?

やっぱりあのマンションで、あの寝室で…新しい彼女を愛するの?

堕ろせば、あたしは確実に生きられる

あたしの我儘で、せっかくの命を見殺しにするって…すごい罪悪感

産めるかもしれないし、産めないかもしれない

それってまるで賭けごとみたい

あたし、賭けごとって好きじゃない

あたしは、自分の部屋で膝を抱えると、そのままベッドに倒れた

答えが出ないよ

どうしていいかわからない

愁一郎はどっちを選んでも、賛成するって言ってくれたけど

どっちも選べないときは、どうしたらいいの?

あたしは「ふう」っと、息を吐いていると、玄関が騒がしくなったのがわかった

身体を起こすと、ドアに近づいて聞き耳をたてた

『あら、愁一郎さん。こんばんは』

『夜分遅くに申し訳ありません。陽菜がこちらにいるとメールがあったので』

『ええ、今は自分の部屋に…ああ、2階にいますよ』

『少しお邪魔してよろしいですか?』

『どうぞ』

愁一郎が? ここに?

どうして…
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