君を愛す ただ君を……
あたしは自分の室内をウロウロとした

どうしよう…今、愁一郎の顔を見たら…なんか、いろいろと言ってしまいそうで怖いよ

あたしのドロドロした感情を見せたくなくて、実家に帰ってきたのに

あたしは自分の位置を定める前に、部屋のドアがノックされて開いた

「陽菜、愁一郎さんが迎えに来たわよ」

ママがドアを開けると、にっこりと微笑んで愁一郎をあたしの部屋に招き入れた

仕事帰りのシーツ姿で、愁一郎が部屋に足を踏み入れると、ママが静かにドアを閉めて、一階に下りていく足音が聞こえた

「どうして……」

あたしはドアの前に立っている愁一郎に口を開いた

「もしかして俺…陽菜に責任を押し付けるような言い方をしちゃったかと思って。それで悩んで、実家に帰るなんて言ったのかと。だから、もし俺と陽菜の間に誤解があるなら、きちんと話をしようと」

「大丈夫。押しつけられた…なんて思ってないから」

あたしは首を横に振ると、愁一郎がほっと肩を撫でおろした

「ごめん。一人で答えを出せって言われも、困るよな。俺としては、陽菜の気持ちを尊重したくて。一人で悩めっていうわけじゃないから…悩みや不安があるなら、俺はいつでも話を聞くよ。一人で抱え込まないで」

「ありがと。でもまだ考えが纏まってないの。愁一郎にどう相談していいかも……」

ドロドロした感情は、知られたくないよ

姿も形もない、未来の女性に嫉妬して…出産を躊躇ってるなんて…バカバカしいって言われるし

「バラバラのパズルのピースでもいいから」

愁一郎が近づくと、あたしの手を軽く握った

温かい手のぬくもりに、あたしの鼻がツンとした

「どうして…愁一郎はそんなに優しいの?」

「陽菜が好きだから」

「あたし…醜いよ。ドロドロしてて、妊娠する前は絶対に産むんだって気持ちが、今はふらふらしてる」

あたしは愁一郎の胸の額を当てて、寄りかかった

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