君を愛す ただ君を……
愁一郎があたしの背中を優しく撫でた

「産みたいけど、産みたくないの。親として失格だってわかってるけど…自分が死んでしまうのが怖い。親なら、自分の命よりも子供を優先にするのはわかってる。わかってるけど、あたし、死にたくない。愁一郎ともっと一緒に居たい。あたしが死んで、子供と愁一郎と…あたし以外のママができるなんて想像しただけで、胸が苦しい。それなら、子供は諦めて、愁一郎と二人で生きてたいって考えちゃうの」

愁一郎の手があたしの肩をポンポンと叩いた

「いいんだよ。それで……。親って言ったって、俺ら、妊娠してるのをわかってまだ1日も過ぎてない。俺は陽菜さえいれば、それでいいんだ。子供はいらない。無理して、産む必要なんてないんだ」

「愁一郎…ごめんね。あたし、親になれそうにないよ」

愁一郎が力強く抱きしめてくれた

「気にするな。俺こそ、ごめんな。陽菜に痛い思いさせてしまうなんて…」

あたしは目じりから涙をこぼすと、首を振った

ごめんね、赤ちゃん

せっかく愁一郎とあたしの血を受け継ぐ子どもたったのに

あたし、怖いよ

産んであげたい…けど、死にたくないの

こんな弱いママでごめんなさい

ごめんなさい

あたし、愁一郎ともっと一緒にいたい

「明日、産科に連絡して予約を入れておくよ」

愁一郎が、小さく鼻を啜った

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