君を愛す ただ君を……
悩み抜いた末に…
『無事、男児を出産しました』

朝方、彩香さんからメールが届いた

『ずっと女の子だって言われてたのに、いざ、この世に誕生したわが子には、立派なモノがついてました』

生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた写メと一緒に、そんな文章が添えられていた

まだ陽ものぼらない朝の4時に、あたしは携帯を握りしめて噴き出した

「陽菜?」

ベッドの中で、愁一郎の眠そうな声が、あたしの名前を呼ぶ

あたしは携帯の写メを、愁一郎に見せた

「大ちゃんの子だよ。まだ赤ちゃんなのに、大ちゃんにそっくりだよ」

愁一郎は薄眼を開けて、写メに映る赤ん坊を見つめた

「そうか? 俺にはただの猿にしか見えないよ」

「ひどっ」

「どの赤ん坊も同じ顔じゃん」

愁一郎はあたしを抱きしめると、瞼を閉じる

無意識なのか…わざとなのか

愁一郎の手があたしの下腹部にいった

まだあたしのお腹の中には赤ちゃんがいる

愁一郎の子が……子宮の中で毎日少しずつ成長している

でもそれも、今日まで

今日の午前中に、あたしは手術を受ける

お腹の赤ちゃんとの時間は、今日でお終い

ごめんね

愁一郎も…赤ちゃんも…

あたしの我儘で、この世に誕生した命を奪ってしまう

あたしは、彩香さんみたいに強くなれないよ

あたしは携帯を閉じると、棚の上に戻した

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