君を愛す ただ君を……
あたしと愁一郎の結婚は破談になった

結婚式の招待客への通知は、愁一郎の母が勝手にやってくれたみたい

あたしは何も知らない

何も聞きたいとは思わないし、今の愁一郎と話をしたいとも思わないから

職場は同じだけど、ただの医師と看護師

あたしと別れた愁一郎は、さっそくお母さんのすすめで見合いをしたみたい

お金持ちの可愛らしいお嬢様と見合いをして、付き合いを深めている

あたしはというと……実家に戻った

あたしが愁一郎の子を妊娠していることは、看護師長と外科部長、そしてレイちゃんしか知らない

愁一郎のお父さんも知ってるけど、誰にも言わないでと口止めをしてある

お腹にいる子は静かに産みたい

誰にも気づかれず…というは無理だけど、もう誰かと揉めたり喧嘩したり、したくない

お腹が大きくなれば、自然とまわりの人たちに妊娠を知られることになるだろうけど

だからと言って雲隠れする気にはなれない

だって、あたしにはお金が必要だもの

もう愁一郎には頼らない

たぶん一人で育てる

ううん、絶対に一人で育てることになるんだから、今の職を失うわけにはいかないの

子供ができると女は強くなれるってよく耳にするけど…その通りだね

お腹に、この子がいなければ、あたし…きっと看護師を辞めて、悲しみのどん底にいたと思う

だけどそうはいかない状況だって、わかってるから

前向きになれる

支えてくれる友人も傍にいてくれるから、あたしは強くなれると思う

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