君を愛す ただ君を……
「なんで? どうして?」

「まあ…なんだ。友達としてのほうがうまくいくってわかったんだよな。付き合ってても喧嘩ばっかでさあ。今のほうが、付き合ってるときより良い関係だよ」

「そうなんだ。付き合ってるかと思ってた」

「フリーだよ。ああ…でもレイはどうだか知らねえなあ。気になるヤツはいるみたいだぜ。今日の弁当だってさあ…料理が上達したいからって俺を毒味役に抜擢しやがって」

海東君が、あたしのお弁当の蓋をあけるとパクパクと食べ始めた

「いつ別れたの?」

「ええっと、いつだったかなぁ。別れて3カ月は過ぎてると思うぞ」

「そうなんだ。全然、わかんなかった」

「俺も。すぐにレイは俺んとこに戻ってくるって自信があったんだけどなあ」

「ええ? もしかして海東君がフラれたの?」

「うるせえよ。惚れた弱みだよなあ…今もあいつの我儘に付き合っちまうのは」

あたしはクスクスと肩を揺らして笑った

「そっか。頑張れ! 独身男」

「ああ…言われたくねえ。独身でフリーな同期の看護師には言われたくねえ…」

海東君が箸を持ったまま、耳を塞いだ

あたしはふと視線を感じて前を見ると、白衣を脱いでみちるさんと腕を組んで歩いている越智先生と目が合った

越智先生だけが、あたしに気がついてこっちを見ている

みちるさんは、あたしたちには気づいてないみたいで、楽しそうに口を動かしていた

「ああ…美味かったぁ。マジで、こりゃ…腹の足しになる」

あたしの弁当を食べ終わった海東君が、お弁当の蓋を閉めてあたしに返してきた

「ご馳走さん」

「いえいえ、冷凍食品で申し訳ないけど」

海東君が立ち上がると、あたしの前に立って笑顔を見せた

「馬鹿越智を取り戻したいなら、俺、いつでも利用されてやるよ」

海東君が、あたしの頭を撫でると「じゃあな」と手を振って歩き出した

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