君を愛す ただ君を……
車の中で、あたしは越智先生とたくさんキスをした

優しい触れるだけのキスから、激しく求めるキスまで何度も何度も

唇が腫れてしまうんじゃないかってくらい

幸せな時間だった

マンションに戻り、あたしと越智先生はベッドで愛し合った

ときどき垣間見える『愁一郎』の姿に、あたしはドキドキした

あたしは、目が覚めると隣にいる愁一郎の横顔を見つめた

愁一郎は、スタンドの明りを頼りに、大量の写真を一枚ずつ眺めていた

「あ…しぃちゃんだ」

あたしは、愁一郎の隣でピースをしているしぃちゃんを見て思わず口を開いた

「あ…悪りぃ。起こしたか?」

愁一郎が写真の束を棚の上に置くと、スタンドの電源に手を伸ばした

「いいの。写真、見てて」

「俺…結構、記憶がないみたいだ。お袋と陽菜だけを忘れているのかと思ったけど…高校時代のほとんどを覚えてない。俺の隣にいるヤツって……」

一番の上にある写真を手に取ると、あたしに見せてくる

あたしと愁一郎と、しぃちゃんの三人で仲良く映っている写真だ

「しぃちゃん。愁一郎の彼女だよ」

「え? 俺、この子と付き合ってたの?」

「うん。付き合ってた。1年くらい交際してたと思うけど……覚えてない?」

「全然」

愁一郎が首を振った

「俺、ずっと陽菜と付き合ってたわけじゃないのか」

「付き合ってないよ。あたしたち、きちんと付き合い始めてから1年とちょっとしか過ぎてないよ」

「そうなのか?」

「うん。お互いに好きだったのは、高校の頃からだけど…」

あたしは、言葉を止めると愁一郎から視線を逸らした

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