君を愛す ただ君を……
アキさんは明るくて強い人だ

少しおっちょこちょいで、可愛らしい一面を見せつつ、まわりを和ませてくれた

お母さんの嫌味にも、笑顔で対応している

本当に寿司を頼んで、一人パクパクと食べる姿にあたしは驚いた

お母さんがタオルで口元を押さえて、寿司のにおいをシャットダウンしている

みちるさんは、お腹を鳴らしながらも、お母さんが食べないので遠慮して口をつけていない

お父さんと愁一郎は、アキさんと張り合うように寿司の取り合いをしていた

「全く料理もしないで。後妻のくせに遠慮もしないなんて」

愁一郎のお母さんが、ブツブツと文句を言う

皆で食事していると、何のためにここに来たのか、忘れてしまいそうだ

「あ…そうだ。俺さ、この病院、継がないから」

「ん。別にいいぞ」

「あ、了解」

寿司のネタを取り合いしながら、お父さんと愁一郎の会話があっさりと終了した

え? そんな会話でいいの?

「サーモン、食うなよ! 俺、次に食べるつもりだったのに」

「サーモンは私のモノって決まってるのよ」

アキさんがにこっと笑う

「それとドイツも行かないから…て、おいっ。イカも食うのかよ!」

アキさんの口の中にイカがパクッと入った

幸せそうに頬張るアキさんに、愁一郎が悔しそうな顔をした

「イカが無いだけに…イカなぁーいってね(行かない)」

アキさんがげらげらと笑いだした

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