君を愛す ただ君を……
愁一郎の顔がますます険しくなった

「独身の看護師と一緒になって遊んでる必要はねえだろ」

「まあ、そうなんだけど。ランチだから…ね、ランチ!」

「ランチだろうが、ディナーだろうが。コンパだろうが、飲み会だろうが関係ねえよ」

「ほら、愁一郎も知ってる店だって」

あたしは愁一郎の背後に見える時計で時間を確認しながら、レイちゃんたちと会う場所を教えた

「ふうん」

「2時間。きっかり2時間したら、帰ってくるから」

「ふうん」

「…もうっ、愁一郎も行く?」

「着替えてくる」

愁一郎は愛菜を抱っこしたまま、くるっと身体を回転させると寝室に戻って行った

あたしは携帯を握ると、レイちゃんにメールした

『ごめん。愁もついてくる』

『コンパに夫がついてきてどうするの!』

『だって…怖いんだもん』

『ま、いいけどねえ。越智先生なら目の保養になるしぃ。大学病院を辞めて、実家の病院に行っちゃったからさぁ。皆、喜ぶでしょ。今更、第一外科の医師とコンパかよって思ったけどさあ。ほんとうに、なんで第一外科なわけ?』

『……だって、あたし、第一外科の医者しかしらないもん』

『しゅにーん』

『産休中の女に、コンパを頼むからでしょ!』

あたしはパタンと携帯と閉じると、着替えが終わった愁一郎が大きな鞄を持って出てきた

「愛菜の荷物ってこれでいいのか?」

「うん、ありがと」

おむつやお菓子など愛菜のお出かけ用セットが一式入ってる鞄を、愁一郎が肩に掛け、片手で愛菜を抱っこしていた

「…で、どの科とランチだよ」

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