君を愛す ただ君を……
「いや…聞くなっていうわけじゃなくて…」

「だって爆弾だったら嫌だし」

「爆弾を尻の下に敷く爆弾犯はいないと思う」

「そっか。んじゃ、何だろ」

越智先生は、ぐるっと一周、私の周りをまわった

「あの……」

「なに?」

私はぷるぷると震える腕で、越智先生を睨んだ

「差し出してるんだから、受け取ってくれませんか! 見ての通り、重たいんです。何、警戒してるんですか。この中身はお金。15年前の入院費と手術代を持って来たんです。足りない分はまた払いに来ますから…とりあえず今日はこれだけ…」

「え? いらないけど」

越智先生の言葉にあたしは、大金を地面に落とした

「はああ?」

「だから、いらないよ。僕、貰ってなかったっけ?」

越智先生が不思議そうに首をかしげている

「あの…ついさっき記憶力は良いほうだって言ってませんでした?」

「記憶力はいい。年とともに若干、衰えはあるけどね」

「私、両親が居なくて。入院費も手術代も払えなかったんです」

「うん、そうだよね。15歳で、一人で闘病に頑張るアキちゃんにはいつも尊敬してたよ」

越智先生が懐かしそうに顔をほころばせると、うんうんと頷いた

「だから、お金!」

「いらない」

「受け取って」

「いらないんだってば」

「受け取りなさい」

「命令?」

越智先生が驚いた顔をする

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