君を愛す ただ君を……
私と越智先生は、ラブホテルに入った

部屋に入るなり、先生は重たい鞄をどさっと床に置いて、よろよろとベッドに向かった

ばたんと倒れこむと、「もう駄目だ」という呟きとともに寝息が聞こえ始めた

寝た……一人で、即効寝たよ、この人

私はスヤスヤと寝てしまった越智先生の顔を覗き込んでから、少し離れた位置にあるソファに膝を抱えて座った

これから…私はどうやって生きていこう

何か、特技があるわけでもないし、学歴なんて全くないに等しい

越智先生に救ってもらった命だけど、近い道が見つからない

答えが見つからないまま、30分が経過すると、越智先生がむくっと身体を起こした

「はあ…楽になったぁ」

両腕を大きく回した越智先生が立ち上がった

「先生って……自由人って言われませんか?」

私はストレッチをしている越智先生に質問をした

「どうかな? 妻には自分勝手な人だって言われるけど」

越智先生が凄く寂しそうな顔をした

「浮気してれば、言われますよ」

「あ、あー。やっぱ見てたでしょ?」

越智先生が、恥ずかしそうに笑った

「見ました。二階から鞄が落ちてきて、びっくりしました」

越智先生が、ベッドに座ると首の後ろを掻いていた

「浮気してないんだけど…ね。妻には愛人がいると思われてて、家にいると何だかんだって機嫌が悪くていろいろと言われるんだ。だから仕事場に行くけど、ゆっくりと休めなくて。結局、病院の近くにアパートを借りて、静かに寝たいときはそこで寝てるよ」

「悪循環…それって奥さんに浮気を疑われても仕方ない気がする」

越智先生が眉間にしわを寄せると、困った表情をした

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