君を愛す ただ君を……
「この家の風呂を、使うの?」

奥さんが凄く嫌な顔をする

「君のせいだろ。こんな泥だらけで、アパートに帰りなさいなんて言えるわけないじゃないか」

「へえ、まだ…一応、別々に住んでるの」

「あのぉ…私、ただの家政婦ですけど」

「は?」

奥さんが、私を睨んだ

「この家の家政婦です。ここのお庭が凄く好きで、毎日見ていたんです。でもどんどんと庭の花が枯れて行くのを見てて、我慢できなくて……先生に声をかけて、お庭のお手入れをさせてもらってるんです。それから奥さんと別れたって聞いて、お給料をいただいて、家政婦にさせていただきました」

泥だらけの身体で、私はぺこっと頭をさげた

「そうなの?」

「僕は家のことがさっぱりできないからね」

「愛人にさせればいいじゃない」

「だから、居ないって」

先生が困った顔をすると、奥さんが驚いた顔をした

「本当に?」

「居ないよ」

「あのぉ…だから、別の部屋で…」

あたしの言葉に、はっとした奥さんが部屋を出ていこうとした

「すげえ…アキさん、泥だらけじゃん」

奥さんの後ろに立った愁一郎君が、面白い物を見るように私を見た

「泥怪人の気持ちが、すごくよくわかった気がする」

私の返事に、愁一郎君がくすくすと笑った

「意味わかんねえ。泥怪人ってなんだよ」

「適当に言ってみただけ!」

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