君を愛す ただ君を……

先生の家の門を開けると、ガシャンと勢いよく閉めて、急いで鍵をかけた

「アキ」

暗闇から手が飛び出してくると、鍵をかけている私の手を掴んだ

「離して！　嫌だっ」

私は掴まれた手を必死に引き抜こうとした

「アキ、話をさせてくれ」

「嫌だ…聞かない。聞きたくない」

私は、男の手から自分の手を無理やり抜き取ると、先生の家の玄関に向かって一目散に走り出した

ガシャンガシャンと、門を壊す勢いで揺らす音が、私の背中から聞こえてきた

「アキ！　くそっ、アキっ。こっちに来い」

低い声で私を呼ぶ

名前を呼ばれるたびに、私の心が恐怖で震えあがった

手の中にある鍵を出すと、鍵穴に必死に突っ込もうとする

だけど手が震えて、なかなか入らない

ああ、もうっ

どうして鍵が入らないの！

パチという音とともに、玄関の明かりが点灯し、ドアの向こうから鍵を開けてくれる音が聞こえた

「話をするだけだって言ってるだろっ」

門の向こう側から、男の大声が聞こえる

ドアが大きく開くなり、私と先生の胸の中に飛び込んだ

「アキちゃん？　何、どうしたの？」

「先生、早くドアを閉めて」

不思議そうな顔をしている先生の腕を引っ張って、私はドアを１秒でも早く閉まるようにする

「アキ…てめぇ。隠れんじゃねえっ」

男の言葉がどんどんと乱雑になっていく

怒っている証拠だ

あそこまで乱雑になったら、もう近づいたらいけない

私は身をもって知っている

ドアを閉まるなり、私は玄関のカギを閉めた