君を愛す ただ君を……
私は早めに起きると、キッチンに立った

先生は和食が好きだ

先生は料理のできない私に合わせて、朝食はパンとサラダにしてくれてる

でも今朝は、先生に和の朝食を作ってあげたいって思った

「アキ、おはよう」

私の真後ろに立った先生が、ぎゅっと後ろから抱きしめると耳元で囁いた

『アキ』

昨日の夜、布団の中で、先生が何度も私の名前を呼んでくれた

その同じ声で、私の名前を呼んでくれる

それだけで、心の奥から温かい気持ちが流れ込んできた

「先生、おはようございます」

「『先生』?」

先生が私の髪をいじりながら、聞き返してきた

「違うでしょ」

「しゅ……愁平さん」

「アキ、なんか…焦げ臭いんだけど」

先生の言葉に私ははっとした

グリルを開くと、「はあ」とため息をついた

「先生、魚が焦げちゃった」

先生が、肩を持ちあげると苦笑した

「アキらしいね。パンとサラダでいいのに」

「だって、先生は和食が好きでしょ?」

「作ろうと思ってくれたその気持ちだけで嬉しいよ」

先生が、私の額にキスをしてくれる
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