君を愛す ただ君を……
-1年後-

「せんせぇーいっ…忘れ物だよ」

私はベランダから、先生の携帯を投げた

「ちょ……アキっ!」

先生が携帯が落ちて行った芝生に向けて走り出す

芝生の上に落ちた携帯を手に入れた先生が、動くかどうかボタンを押して確認する

「アキ、壊れたらどうするんだ!」

私はベランダの手すりに手を乗せて、にこにこと笑って先生の不機嫌そうな顔を見つめた

「だってやってみたかったんだもん。2階からモノを投げるの!」

「あのなあぁ…」

先生が呆れたように頭を抱えた

「あとね…先生の愛車に落書きもしてみたい」

「するなっ!」

先生が、首を横に振った

いつかしてみたいなぁ…口紅で先生の車に落書きするの

「そのうちやってみるね」

「だから、やるなってば」

「仕事、遅れるよ?」

「アキが呼びとめるからだろ」

先生が後頭部をガシガシと掻きながら、門に向かって歩き出した

先生のスーツの裾がなびくのを見ながら、私は明日は何を投げようかと頭を捻った





【番外編】『窓から見える風景』
        終わり
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