君を愛す ただ君を……
「圭くん、早く借りて帰ろうよぉ」

甘ったるい女性の声が、桐沼さんのレジの前で聞こえてきた

「わかったよ。全く、みーちゃんはせっかちだな」

「だって圭くんとエッチしたい」

聞き覚えのある男の声に、あたしは桐沼さん越しにお客の顔を確認した

げっ……旦那だ

あたしは慌ててしゃがみ込むと、レジの下に隠れた

…て、仕事は?

医者がこんな昼間っから愛人宅でエッチすんの?

仕事しなさいよ、仕事っ!

「僕だって、みーちゃんと一つになりたいよ」

二人でクスクスと笑い合っている声が、あたしの身体に突き刺さった

圭くん? みーちゃん?

きもっ……

『一つになりたい』って…馬鹿な奴ら

さっさとエッチしたいなら、レンタルショップになんて来なければいいじゃない

あたしは、何も考えずに近くにあったものをぎゅっと掴んだ

「…ぃっあ」

桐沼さんの小さな声に、あたしはぱっと手を離した

つい苛々して、桐沼さんのズボンと足の肉を、これでもかってくらい握りしめたのだ

「なぁに?」

レジの前にいるみーちゃんが、桐沼さんの声に反応した

「このエロビデオ、つい最近見たなあって。この女優って、嘘くさい演技で白けるっすよ?」

桐沼さんが顔色も変えずに、二人に話しかけた

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