君を愛す ただ君を……
桐沼さんが微笑むと、瓶ビールを差し出している男性の前に指を出して横に振った

「おやっさんに、ウーロン貰ってきて」

「は…はいっ」

男性は、瓶ビールをテーブルに置いたまま、小走りで靴を履いて階段を下りて行った

「ありがとうございます」

あたしはペコっと桐沼さんに頭を下げた

「無理して飲む必要はないよ」

ドタドタと階段をあがってくる音がすると、さっきの男性がグラスを持って戻ってきた

「ウーロンです」

そう言いながら、あたしの前に置いてくれる

「す…すみません。ありがとうございます」

次は自分で、ウーロン茶を取りに行こうと思いながら、あたしはお辞儀をした

小皿にいろいろと食べ物を乗せていた人たちが、今度は近づいてくると、割り箸と共に、桐沼さんとあたしの前に置いてくれた

「どうぞ!」

「あ…す、すみません。ありがとうございます」

あたしはまたお辞儀をする

桐沼さんは更に盛られているのを見てから、皿を置いた男子を見た

「ご飯モノは? 無いなら、おやっさんに炒飯かおにぎりを握ってもらってきて」

「あ…はい。すみませんっ」

桐沼さんの言葉を聞いてから、立ち上がると、各テーブルに置いてある大皿を確認してから、靴を履いて階段を下りて行った

「あの…あたし、取りに行ってきますよ?」

「いいって。そんなことしなくて」

桐沼さんが皿に視線を落として「食べなよ」と言わんばかりの顔をした

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