君を愛す ただ君を……
「俺、凛がすごく気になる。旦那がいてもいいよ。俺と付き合ってよ」

桐沼さんの言葉に、あたしは下を向いた

「答えはすぐじゃなくていいから。まずは友達から…あ、でもキスはしたい、かも」

桐沼さんがおでこにキスをした

「友達はキスをしないと思う」

「じゃあ、友達以上恋人未満」

「んー…なんかちょっと違う気がする」

桐沼さんが首を倒すと、少し考えた

「今ある枠に当てはめなくてもいいっか。俺らの形を作ればいい。凛を幸せにしたい」

胸の奥が、すごく温かくなった

桐沼さんの言葉が、嬉しい

誰かに『幸せにしたい』って言われたの、生まれて初めてだよ

幸せになれるから…って言われて結婚しても、嬉しくもなかったし、幸せでもなかった

将来、役に立つからと…テニスをやったり、ピアノをしたけど…役に立った気がしない

母が言ったので、まあ…良かったなあと思うのは料理くらいだろうか

でも食べてもらえる人がいないのは、つまらない

「ありがとうございます。今の言葉、すごく嬉しいです」

桐沼さんが少しはにかむと、歩き出した

「家の近くまで送るよ」

「電車に乗りますよ? 一人で帰れますって」

「いいよ。電車だろうが新幹線だろうが、乗りましょ」

「いいんですか?」

「もう少し一緒に居たい」

桐沼さんの言葉に、あたしの頬が熱くなった
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