君を愛す ただ君を……

「ゆっくり行こう。俺らのペースで」

「莱斗さん」

「デートを重ねて、たくさんキスをして、たまには喧嘩もして…」

あたしはコクンと頷いた

莱斗さんがあたしの身体から離れると、優しくて温かい笑みを見せてくれた

「大丈夫だから。俺は、凛を大切にする」

「ありがとう」

あたしは莱斗さんの唇に吸い込まれるように、顔を近づけた

瞼を閉じて、莱斗さんの吐息を感じる

まだ重なってないのに、莱斗さんの体温の熱があたしを包み込もうとしてくれる

「もし夕飯がまだできてないなら、久しぶりに外食で……も…」

居間のドアを開けたパパが、キスまであと１秒というところを目撃して氷のように固まった

あたしも背筋を伸ばすと、手を後ろに組んでぎこちない笑顔を作った

莱斗さんも、ソファの背もたれに背中を預けると、松葉づえを落ち着きなく触った

「あー、たまには…なあ。外食もいいよなあ」

必要以上にパパが大きな声を出す

「そ…そうだね。たまには…いいねえ」

あたしは乾いた笑いをあげながら、やっぱり大きな声で答える

「き…桐沼君は何が食べたいかなあ？」

パパの大きな声に、莱斗さんも苦笑した

「な…何でもオッケーっす」

そんな異様な雰囲気の中に、アキさんが戻ってくる

何も知らないアキさんは、三人のぎこちない笑みを見て首を傾げた

「何やっての？」

「いやあ…外食でも？」

「は？　怪我人がいるのに？」

アキさんの冷静な突っ込みに、あたしたちの視線は莱斗さんの足に向いた

「そうだった！　忘れてたぁ…あはは」

パパがそう言いながら、また居間を出て行った

「何？　どうしたの？」

アキさんが首を傾げると、意味がわからないと言わんばかりに冷たい視線をパパに向けた