君を愛す ただ君を……
凛が旦那の浮気旅行を見送ったあと、俺の試合を見に来てくれた

大会中は凛に会えないと諦めていたから、凛の夫の浮気旅行にちょっと感謝した

けれど、浮気旅行と知っていて送り出す凛を想うと、夫の行動に苛つく

どうしてあいつは、凛という可愛い妻がいるのに小原さんを浮気をしているのか

凛は今、すごく悩んでいるのだろう

俺よりもきっと苦しんでいるに違いない

『試合、お疲れ様でした。莱斗さんが、シュートするたびに、格好良くてすごくドキドキしました。莱斗さんの人気の高さにもびっくりです。女性たちの歓声を聞いて、莱斗さんの凄さを痛感しました。あたしは、このまま家に帰ります。莱斗さん、もうあたしたちは会わないほうがいいと思います』

メールを見て、頭が真っ白になった

どうして?

なんでもう会わないほうがいいと言うのか

俺には、凛しかいないのに

会えないなんて考えられない

そう思った

いや…実際には、凛には夫がいるのだから、会わないという選択が正しいのはわかってる

こんな中途半端な関係でいるほうが、凛にとって良くないのもわかってる

ただの俺の我儘で、凛を振りまわしているのも理解している

だけど心が駄目なんだ

凛に会いたい

凛の傍にいたいと訴えてる

凛に会えなくなるくらいなら、凛の今の生活を壊したい…なんて思ってる俺がいる

夫の浮気を暴露して、凛を奪いたい

だけど凛はそれを望んでない

凛の夫が同じ空間にいるとわかってるのに、俺は凛を守れなかった

同じエレベータに乗っていたのに、凛の夫を殴ることも怒鳴ることもできず、二人一緒に降りていく姿をただ見ているしかできなかった

俺に踏み込める空気が、なかった

ああ、凛はあいつの妻なんだって実感するだけだった
< 460 / 507 >

この作品をシェア

pagetop