君を愛す ただ君を……
「酒に弱いなら、あんなに飲むなよなぁ!」

俺は小原さんを担いで彼女の部屋に入った

ベッドに放り投げるように、小原さんを背中から離した

「…っるさい。何度も言うけど、私はねえ! 圭と長い付き合いなんだからね。あんな肩書だけの奥さんとは違うの。もうずーっと圭と付き合ってるのよ」

「何度も聞いたよ」

俺は、ベッドに横になった小原さんに横顔を見た

涙で頬が濡れている

この人もきっと、苦しいんだろ

あの男が独身のときからずっと付き合っていたらしい

まだあの男が医大生のときも、あの男を支えてきたらしい

あの男と結婚するつもりでいたところを…凛に取られたって

凛がとったわけじゃないけど

凛のお母さんの策略って感じだよな

凛が逆らえないのをいいことに結婚をしたんだから

「ねえ…抱いてよ」

「嫌だよ」

「なんで?」

「圭って人が好きなんだろ?」

「嫌いよ。あんなヤツ。ただ頼ってくるから別れられないの。奥さんを抱いてないって…私だけだって言うから…つい、信じちゃう。そんなわけないじゃんねえ。同じ空間にいて、生活してるなら」

「どうかな」

「忘れたいのよ。あんな男…忘れさせてよ」

小原さんが俺の手を握ってきた

重ねてきた小原さんの手を俺はポンポンと叩いた

「駄目だよ」
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