君を愛す ただ君を……
俺はベンチ裏に行こうとすると、海堂さんの隣にいた女性が追いかけてきた

「ちょっと…桐沼君、待って!」

俺は足を止めると、振り返った

「これを君に渡せって。彰吾が」

女性がチケットとパスのようなものを差し出してきた

「これは?」

「チケットは海堂のチームのバスケ試合があるチケット。それとこっちはパスよ。チームの練習風景を見てもらったほうがいいって。彰吾は君を気に入ってる。海外で鍛えてきたら絶対に凄い選手になるって言ってるよ」

「ありがとうございます。海堂さんにそう言ってもらえるだけで嬉しいです」

俺は頭を下げた

「怪我が多いのを気にしているけどね。正しい練習方法を学べばもっともっと伸びるって。独りで努力をし過ぎだから、一度、ゆっくりと話をして筋トレの仕方を教えてあげたいって言ってたよ」

「え?」

「彰吾は貴方の頑張りを知ってる。じゃあね。また会えるのを楽しみにしてる」

女性は手をあげると、海堂さんのもとへ走っていく

取材記者がいるのも気にせずに、海堂さんは女性が戻ってくるなりキスをしていた

奥さんか…

海堂さんが女性に平手打ちにされると、少し不満そうな顔をしていた

俺をちゃんと見て、認めてくれる人もいるんだな

海堂さんに認められたのは凄く嬉しいかも

俺は海堂さんたちに背を向けて歩き出した

確かに、怪我が多いよな、俺…

手の中にあるパスを俺は見つめた

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