君を愛す ただ君を……
俺は地元の駅に到着すると、バスケのメンバーたちと別れて、タクシー乗り場に向かった

「桐沼君」

背後から呼びとめられて、俺は振り返ると、髪をばっさりと切り、茶色に染めた小原さんが大きな鞄を持って立っていた

「小原さん、旅行ですか?」

小原さんが首を左右に振った

「最後に君に会えて、良かった」

小原さんが寂しそうに笑った

最後?…ってことは、凛の旦那と別れたのか?

俺は生唾を飲み込んだ

もしかして凛は旦那とやり直すつもりでいるのだろうか

「君の言う通りね。辛いからって甘えちゃいけないのよ。よくわかった」

小原さんが、すっきりした顔を俺に向けた

「彼氏と別れたんですか?」

「ええ、きっぱりと。もうこの街を出て行こうと思って。ここにいたら、きっとまた圭のところに行ってしまうから。新しい場所で、頑張ってみようと思う」

「そうですか」

俺は小原さんに笑顔を見せた

凛はどうするのだろう

圭は、浮気相手に振られた

きっと旦那は凛のもとに戻っているはずだ

「圭ね…奥さんに離婚届を突き付けられたんだって。それで別れたくないって言って、もう私と別れるからって頭を下げたらしいの。それでも奥さんに拒まれたらしくて…私のところに来たの。それで、ああもう駄目だなって感じた。このままズルズル、付き合っても、私は幸せになれないなって」

凛が離婚届けを?

夫に?

それからどうなったんだ?

二人は離婚するのか?

「必ず幸せになりますよ」

「圭に黙って来ちゃったんだ。きっと今頃、驚いてるわ。それとも奥さんとうまくいったかしらね」

俺は小原さんに微笑むしかできなかった

できれば離婚していて欲しい
< 470 / 507 >

この作品をシェア

pagetop