君を愛す ただ君を……
凛に会いたいな

凛と話がしたい

声が聞きたいよ

「君は、彼女とうまくいってるの?」

「どうでしょうね。フラれたら小原さんみたいに街を出て行こうかな?」

俺は肩を竦めて、笑った

「若いのに…すぐ新しい彼女ができるわよ」

小原さんがにっこりと笑って俺の背中を叩くと駅のほうに歩いて行った

俺は小原さんの背中を見送った

小原さんはこれからどこで、どんな生活をしていくのだろう

きっと大変だろうけど、幸せを掴めるはず

改札を潜った小原さんの背中を見て、俺は笑顔を送った

もう会わないだろうけど、幸せになってください

駅の中に入っていってしまった小原さんの背中の残像を俺はしばらく眺めていた

俺も凛ときちんと話をしよう

きちんと……

俺は顔をあげて、駅に背を向けようとしたとき『キャー』という声と、電車の急ブレーキの音にびっくりした

え? 何?

「人が落ちたぞ!」
「若い女性だ」
「死んでるのか?」

駅の中から聞こえてくる声に、俺は「まさか」と呟くと駅に向かって走った

「すみませんっ」と人の間を通り抜けて、奥に進んでいく

駅のホームには見覚えのある鞄が置いてある

下には……真っ赤な血だまりが見えた

「な…なんで?」

俺は、涙で視界が歪んだ

「どうして…」

俺はよろよろと前に進んでいくと、下にいるであろう小原さんを確認しようとした

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