君を愛す ただ君を……
「君、危ないよ。下がって」

俺は駅員に止められると、肩をぐいっと押されて後ろにやられた

「知り合いかもしれないので…」

俺は駅員の腕を掴んだ

駅員は首を左右に振ると、暗い表情をした

「申し訳ないけど、無理だよ。ぐちゃぐちゃで、とてもじゃないけど判別なんてできない」

「じゃあ、あの荷物は…落ちた人のモノですか?」

「たぶんね」

「そうですか。ありがとうございます」

俺は駅員にぺこっと頭をさげると、ホームに背を向けた

どうして…なんで?

新しい街に行って、人生をやり直すんじゃなかったのかよ

なんで自殺なんだよ

髪型を変えて、髪の色をかえて……心機一転じゃなかったのかよ

電車に飛び込むんじゃなくて、乗るんだろ?

今更、間違えるなよ

俺は改札口で身体を丸めて小さくなると、涙を流して泣いた

そんなに良い男だったのかよ

圭ってヤツが…

自分の命を投げ出してしまうくらい、格好良い男だったのかよっ

意味がわかんねえよ

なんで死ぬ必要があるんだ?

小原さんの人生を犠牲にする必要のある男だったのか?

違うだろ

死ぬなよ…生きててよ、頼むから

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