君を愛す ただ君を……
ガタンっという音と、背中と後頭部に走る痛みで、俺は目を覚ました

「…あ? なに?」

身体を起こすと、俺はきょろきょろ周りを見渡す

素早く状況判断をして、次の対策を練らねば…なんて目覚めたばかりの脳が俺の身体に指令を出す

見慣れた…いや、見飽きた部屋模様に、ここが自分の部屋で、ベッドから落ちたのだと俺は理解した

なんだ…落ちただけだ

別にたいしたことじゃないや…なんて首のストレッチを始めると、携帯が真横から飛んできて俺のこめかみを強打した

あ? 次はなんだ?

飛んできた携帯が床にごろんと落ちると、静かに鳴っているバイブレーションに視線を落とした

ああ? 電話か?

…て、誰が、俺の携帯を投げた?

「佐山、うるさい。どうにかしてよ」

なんだ、佐久間か

俺は、俺のベッドの中で、不機嫌な声をあげている佐久間を横目で確認している

そうだ…昨日、おやっさんとこで飲んでから、佐久間と俺のアパートに来たんだっけか

「お前って…良い女だよな」

俺が、昨晩の佐久間を思い出しながら言っていると、枕が顔面に飛んできた

「電話、出ろ」

「へいへい」

俺は液晶で相手を確認することもなく電話に出た

「もっしもーし」

起きたばかりとは思えないほどのハイテンションで俺は電話に出ると、『たぁくぅ』とテンションの低い女の声が聞こえてきた

げっ…電話に出なければ良かった


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