君を愛す ただ君を……
大ちゃんが、寂しそうに笑った

「どうしてかな? 僕にもよくわからないんだ。でも同情や憐れみで、陽菜の隣に居ようとしてるわけじゃない。陽菜なら、僕のこの気持ちを理解してくれんじゃないかって思ったからかな?」

大ちゃんが、頭を掻くと恥ずかしそうに唇を舐めた

「さて、部活を始めないとな」

「大ちゃん、ごめんね。何も知らないで、昨日は『嫌い』って言っちゃって」

大ちゃんが『フッ』と笑うと、首を横に振った

「いいよ。僕も、陽菜に嫌われるようなことしてたし。だからって婚約の話を無かったことにはしないよ。僕には陽菜が必要なんだ。越智には負けないよ」

大ちゃんがあたしの肩をぎゅっと抱き寄せると、額にキスを落とした

「大ちゃん…」

「最期まで陽菜の傍にいるよ」

消えてしまいそうなくらいか細い声で、大ちゃんが囁くと、あたしから離れた

「ちゃんと診てもらってきて。僕にも、きちんと報告してくれよ。家で待ってるから」

「うん。わかった」

大ちゃんが安心した顔であたしに手を振ってから、校庭に向かって歩き出した

大ちゃんも苦しんだんだね

最愛の人が、入院して死んでいく姿を見てきたんだ

あたしも近々そうなるのかな?

病院のベッドで、点滴を打ちながら…死んで行くのかな?

死の直前に目にするものは何?

痛みながら…苦しんで、心臓が止まるの?

それとも全然、わからないうちに意識が無くなっちゃうの?

あたしは、どんな生活をして…あとどれくらい生きられるの?

生きている間に、どんな経験ができるの?

わからない

わからないから、怖いし不安だけが支配をする

どうしたらいいのか…見えなくなる

「大丈夫だよ、涼宮。俺がいる」

ぎゅっと背後から誰かに抱きしめられると、耳元で低い声がした

「お…越智君?」

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