君を愛す ただ君を……
「良いお天気ですねえ…って言おうと思って」

俺は乾いた笑いをあげて、佐久間を睨む

佐久間がぷいっと横を向くと、俺に背を向けた

…んだよ、何、怒ってるんだよ

「ライ、それ凛ちゃんのお弁当?」

「あ、ああ。まあな」

「一緒に住んでんの?」

「んー、微妙」

「なんで?」

「俺のアパート、狭いし」

「引っ越せばいいじゃん」

「金ねえし」

「バイトしてんじゃん」

「辞めたよ。凛と過ごす時間が無くなるから」

「あ…そう。んじゃ、狭い部屋で思う存分いちゃつけ」

「そうしてる」

「はぁ…さいですかぁ」

俺は鞄の中にある財布を探す

俺も何か食いたい

朝を食いっぱぐれてるし、これで昼も食べないんじゃ…俺の胃袋が悲鳴をあげる

がさごそと鞄の中をあさって出てきた財布は、見事なほどぺったっこで何も入ってなかった

「はあっ?」

俺は小銭入れから、札入れまで念入りに開いてみるが…一円たりとも入っていない

「…金がねえ。しかも銀行のカードまで盗られたぁ」

俺は肩をがっくりと落とすと、そのまま魂の抜けた顔になった

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