君を愛す ただ君を……
「え? 佐山、盗まれたの?」

佐久間が驚いた顔をして、声をあげる

「あぁ…平気。誰がやったかはわかってるから」

俺はテーブルに顔を伏せると、下着姿の姉貴を思い出した

くそっ…何が小遣いを弾むだよ

俺の財布から盗んでんじゃねえよ

頭上から、くくっとライの失笑が聞こえてきた

「また、やられたか?」

「ああ、しっかりと」

「学習能力ねえなあ」

実の姉が金を盗むとは思わないだろ…ってもう何度も被害に遭ってるけど

「午後の授業もバッくれるから…よろしくぅ」

俺は席を立つと、ライたちにひらひらと手を振った

「練習には間に合うように帰ってこいよ」

ライがにやっと笑った

「あいつの豪遊を止められたらねえ……」

俺は力ない声で答えると、よろよろと立ちあがった

今日は膝が痛いのに…姉貴に午後も振りまわされるのかと思うと、憂鬱になった

佐久間にだったら、振りまわされてもいいのにな…なんて頭の片隅で思ってみた

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