君を愛す ただ君を……
結局、俺は俺の金で豪遊しているであろう姉貴を捕まえられずに、大学に戻った

朝から何も飲み食いしていない俺は、練習に集中できずに、体育館の隅でダラダラと過ごした

「飲料水を飲むのにも、今の時代、銭がないと飲めないとは…」

俺は独り言をぼやくと、コートの中で優雅に走り回るライを恨めしそうに眺めた

いいよなあ

恋人に弁当を作ってもらって、恋人の愛に包まれてバスケをしているヤツはさぁ

俺は恋人もいなけりゃ、金もねえし…姉貴の家の掃除はするし…姉貴たちの飯の世話もする日だってあるんだから

遠いところに引っ越せば、姉貴たちの無茶ぶりな命令から逃げられると思ったら大間違いだぜ

姉貴たちが俺の引っ越し先の近くに引っ越してくるんだから…参った、参った

…てかさぁ、自立しろっつうんだよなあ

いつまでも弟に頼るなよ

弟に頼る時点で間違ってるだろ

一番上に姉貴なんてもう30過ぎてんだぞ?

人によっちゃぁ…結婚して、子供の生まれてるんじゃねえの?

弟に世話されるより、自分が子供の世話をする年なんじゃねえの?

ぐぅっと腹の虫が鳴ると、俺はお腹を抱えて身体を丸めた

「腹減った」

「結局、掴まらなかったみたいだな」

ライがタオルを首からかけて、俺の隣に座った

「うまく逃げるよなあ…たくさあ。俺はあいつらから逃げられないのに、あいつらは俺から簡単に逃げるんだよっ。ああ、もう…俺の金を返せっつうの」

俺の腹も、欲求を訴えてくる

「飯…凛に一人分多く作ってもらおうか?」

「いい。仲良しカップルの間に入るのは厳しい」

ライがにやっと笑う

「じゃあ、どうすんだよ」

「うーん、家に帰って冷凍庫の中にある氷でもかじるかなぁ」

「貧乏くせぇなあ」

「仕方ないだろ。姉貴に、金品類を全て奪われたんだから」

「麗しき姉弟愛だな」

「どこが! こりゃあ、虐待だっつうの。可愛い弟にヒモじい思いをさせるなんて」

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