君を愛す ただ君を……
考えている内容が、まるでわかっていたかのような言葉にあたしはドキリとした

喉仏にかかる低い声が、あたしの心臓をぐっと掴んだみたいに感じた

「越智君、ランニングは?」

「もういいって、岡崎が言ってくれた。病院に行こうか」

あたしは「うん」と答えると、越智君の手が身体からすっと離れた

『ねえ、あれって…笹原さんの彼氏じゃない?』

『だよね? ていうか、あの子って笹原さんの親友じゃなかった?』

『マジ? 親友の彼氏を寝とったの?』

違うクラスの女子たちの囁きが、ふと耳に入ってきた

あ……そうだよね

みんな、知ってるよね

越智君がしぃちゃんの彼氏だって…1年も付き合ってれば、周知の仲になるよね

越智君の手があたしを手を握ってきた

あたしは手を振りほどこうとするが、越智君が離そうとしてくれなかった

「越智君っ!」

「どうして嫌がるの?」

「だって、さっきの言葉…聞こえてきたでしょ? きっとまだ見られてるよ」

「別に、俺は悪いことをしてるわけじゃないよ。しぃとは別れたし」

越智君は、気にすることもなく歩き出した

「ちょ…越智君」

越智君の中で、区切りはもうついているのかもしれないけど…周りは違うよ?

しぃちゃんだって、越智君をまだ好きなんだよ?

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