君を愛す ただ君を……
「よっ」

俺は待ち合わせ場所に待っている詩織に片手をあげた

俺の顔を見つけた詩織が、にっこりとほほ笑んだ

その笑みに高校生のときの俺は、かなり癒された

「忙しいのに、ごめんね」

詩織がぺこっと頭をさげた

「こっちこそ、ごめん。大学にまで来てもらっちゃって」

俺はジャージ姿で、詩織に笑顔を見せる

練習前のひと時を使って、詩織と俺は会った

「ううん。話がしたいって言ったのは私だから」

詩織が、寂しそうな顔をした

「そうだ! 詩織にさ…渡したいものがあったんだよ」

俺はジャージのポケットに手を突っ込むと、金色のボタンを出した

「え?」

詩織が不思議そうな顔をして、ボタンを見てから俺を見た

「約束しただろ? 卒業式の時にあげるって。詩織、卒業式のときにいなかったから。あげそこねた」

詩織が白い掌を出すと、その上にコロンとボタンを落とした

「ありがと」

「いや。約束だからな」

詩織がぎゅっとボタンを握りしめた

詩織の頬に一筋の涙が落ちた

「私ね…ずっと大空君が好きだったの。だから…バスケに大空君をとられたくなかった。でも実際にバスケから大空君を奪ったら、怖くて…ごめんなさい」

詩織は深く頭を下げた

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