君を愛す ただ君を……
「涼宮、診察が終わってるなら、言ってくれよ」

看護師に囲まれていた越智君が、ソファから尻を浮かすと、あたしのほうに振り返りながら口を開いた

看護師の4人の視線が一気に、あたしに向いた

看護師4人の厳しく冷たい視線で、あたしの全身を舐めてくる

まるで値踏みされているみたい

「え? あ…えっと」

あたしは視線をそらすと、こめかみをぽりぽりと掻いた

「愁君?」

さっきあたしを睨んだ看護師が、越智君の腕に絡みつくように指を絡めてきた

立ちあがって、移動しようとした越智君は、看護師に引きとめられ、あたしから目を離した

「何ですか?」

「あの子、誰?」

「どうして?」

「だって…愁君が女の子を連れてくるなんて」

「意外ですか? 俺だってもう高校生ですから」

越智君が、看護師の女性の手を払うと、輪から一人抜け出した

「どうして離れたところに座ってるの?」

越智君があたしの前で足を止めると、手を伸ばしてきた

あたしの前髪に触れると、越智君の綺麗な指先に絡めた

「あ…楽しく話してたから、邪魔しちゃ悪いって思って」

「邪魔なわけないだろ。俺は、涼宮が終わるのを待ってるだけなんだから」

看護師4人の視線が痛いくらいに身体に、差し込んできているのがわかる

『あの子は誰?』
『愁君の何なの?』

と、言わんばかりの彼女らの気持ちまでもあたしの皮膚にぴりぴりと伝わってきた

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