君を愛す ただ君を……
「物足りないなんて…そんな」
あたしは、越智先生との会話を思い出すと、そんな風に思えなくて、思わず首を横に振っていた
「俺、昨日まで親父が嫌いだった。自分勝手で、家族に興味すら湧かないヤツなんてってずっと思ってたから。そのくせ、俺には医者になれ…とか、部活に意味はないとか。言いたい放題で、成績が落ちれば不機嫌になるし。ふざけんなって思ってた。俺は親父の人形じゃねえって、昨日ブチ切れたら、なんかすっきりした」
越智君が白い息とともに、心の中のもやもやを吐き出したように感じた
「越智君も『ブチ切れ』るなんてことがあるんだ。なんか意外だな」
「俺だって怒るさ。涼宮の前では、怒ったことがないだけで…家じゃ、いつも苛々してる、かな?」
越智君が、恥ずかしそうに首の後ろを掻く
あ…越智先生と同じ仕草だ
あたしは、越智君の指を見つめた
「苛々してるの?」
「母親の俺への興味は、成績と勉強している姿だけ。母親の愛情は全部、妹にいってる。父親は仕事人間でほとんど家にいないし、気にするのは医学部に入れるかってことだけ。俺、家にいても息苦しいんだ」
越智君が寂しそうな横顔を見せた
「ごめ…あたし、全然知らなくて。2年生になってから、いつもしぃちゃんと一緒に帰ってたのに。気づけなくて…」
越智君が、そっとあたしの手に指を絡めてきた
お互いに冷たい指が絡み合った
「言わなかったからね。言いたくなかったし。涼宮には、格好良いとこしか見せたくなかった」
「え?」
「俺って、好きな人にはこんなに優しいんだよ…とか。尽くす男だよって。知ってもらいたくて、マイナスになりそうなことは全部隠してたんだ」
越智君の指に、あたしの手の甲に刺さるんじゃないかってくらい強く握りしめてきた
「しぃと仲良くすることで、涼宮に嫉妬してもらいたいって思ってた」
「え?」
「羨ましそうに見ることはあっても、嫉妬はしてくれなくて、毎日辛かったよ」
越智君が前を向いたまま、自嘲した笑みを見せた
あたしは、越智先生との会話を思い出すと、そんな風に思えなくて、思わず首を横に振っていた
「俺、昨日まで親父が嫌いだった。自分勝手で、家族に興味すら湧かないヤツなんてってずっと思ってたから。そのくせ、俺には医者になれ…とか、部活に意味はないとか。言いたい放題で、成績が落ちれば不機嫌になるし。ふざけんなって思ってた。俺は親父の人形じゃねえって、昨日ブチ切れたら、なんかすっきりした」
越智君が白い息とともに、心の中のもやもやを吐き出したように感じた
「越智君も『ブチ切れ』るなんてことがあるんだ。なんか意外だな」
「俺だって怒るさ。涼宮の前では、怒ったことがないだけで…家じゃ、いつも苛々してる、かな?」
越智君が、恥ずかしそうに首の後ろを掻く
あ…越智先生と同じ仕草だ
あたしは、越智君の指を見つめた
「苛々してるの?」
「母親の俺への興味は、成績と勉強している姿だけ。母親の愛情は全部、妹にいってる。父親は仕事人間でほとんど家にいないし、気にするのは医学部に入れるかってことだけ。俺、家にいても息苦しいんだ」
越智君が寂しそうな横顔を見せた
「ごめ…あたし、全然知らなくて。2年生になってから、いつもしぃちゃんと一緒に帰ってたのに。気づけなくて…」
越智君が、そっとあたしの手に指を絡めてきた
お互いに冷たい指が絡み合った
「言わなかったからね。言いたくなかったし。涼宮には、格好良いとこしか見せたくなかった」
「え?」
「俺って、好きな人にはこんなに優しいんだよ…とか。尽くす男だよって。知ってもらいたくて、マイナスになりそうなことは全部隠してたんだ」
越智君の指に、あたしの手の甲に刺さるんじゃないかってくらい強く握りしめてきた
「しぃと仲良くすることで、涼宮に嫉妬してもらいたいって思ってた」
「え?」
「羨ましそうに見ることはあっても、嫉妬はしてくれなくて、毎日辛かったよ」
越智君が前を向いたまま、自嘲した笑みを見せた