君を愛す ただ君を……
「ねえ、涼宮。俺と付き合って欲しい」

越智君が足を止めると、あたしをまっすぐな視線を見つめてきた

痛いくらいの熱い視線に、あたしは見つめ返すことができなかった

視線を少し下に落として、越智君の唇に視点を合わせた

「でも…しぃちゃんと…」

「別れたって言ったよね?」

「そうだけど。しぃちゃん、泣いてたよ」

「知ってる。今日、廊下ですれ違った時に目が腫れてたから」

「なら…」

「どうして駄目なの? 涼宮は俺が好きなんでしょ? 俺も涼宮が好きだ。なのに付き合えないっておかしいだろ?」

越智君が、眉間に皺をよせていた

「1年近く付き合った恋人に対して、越智君、ちょっと冷たくない?」

しぃちゃん、越智君のことをすごく好きなのに…

「冷たいってなに? 俺、別にしぃが好きってわけじゃない」

「好きじゃないのに、1年も付き合ってたの?」

「好きじゃなくていいから、彼女がいないなら付き合えって言ったのはしぃだぞ。俺はその通りにしただけで、別に感情が伴っていたわけじゃない。しぃが別れようと言わないし、俺も別に他の人と付き合う機会がなかったから、付き合いが長くなっただけだ」

越智君が不思議そうな顔をしている

どうして俺が責められなくちゃいけないんだ? と言わんばかりの顔をしてる

「しぃちゃんはずっと越智君が好きだったんだよ?」

「俺だって、涼宮をずっと好きだよ。告白して、振られたからってすぐに気持ちを切り替えられない」

越智君の声が荒くなった

「しぃちゃんだって同じだよ。1年も付き合ってたんでしょ? 付き合ってて、やっぱ好きだった人とうまくいきそうだから、別れようなって辛すぎるよっ」

「『好きだった人』じゃない。『好きな人』だ。俺の気持ちを過去形にしないでくれ。俺は、1年のときからずっと涼宮が好きなんだ。今も、これからも俺は涼宮が好きだ」

越智君が、あたしの肩をぐっと引き寄せて抱きしめてきた

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