君を愛す ただ君を……
「有意義って?」

「陽菜はもっと我儘になっていい。もっと自分の想いを表に出していいんだよ」

「それって、あたしの命がもう終わるから? いつ死んでもいいから、誰かを傷つけても許されるって言うの?」

「違うっ! そういう意味じゃない。誰かを傷つけて、押しのけてまで幸せを勝ち取れとは言ってない。だが、他人の眼ばかりを気にして、自分の気持ちをおざなりにし過ぎてるって僕は思う」

「大ちゃんには、わからない。あたしの…気持ちなんて」

あたしは大ちゃんのジャージをぎゅっと掴むと、嗚咽を漏らしながら、涙を流した

どうして?

あたし、しぃちゃんも越智君も二人とも好きなんだよ?

二人とも、笑顔で過ごして欲しいの

どうしたら、笑顔になるの?

あたしの気持ちを隠していれば…って思ってた

でも、越智君に聞かれちゃって…なら、あたしが越智君の気持ちを受け入れなければ、今までの関係のままでいられるって思ったの

それはいけないことなの?

きっと…昨日、越智君と一緒に帰ったのがいけなかったんだ

一人で病院に行って、診察を受ければ…こんな大事にはならなかった

あたしが、つい越智君に甘えてしまったのがいけなかったんだね

「す…涼宮?」

階段の下から、越智君の低い声が聞こえた

あたしは大ちゃんの胸から顔を上げると、声のしたほうに顔を動かした

越智君の隣には、しぃちゃんがあたしを睨んでいた

「ねえ、言ったとおりでしょ?」

しぃちゃんが、越智君に囁いている言葉が聞こえた

え? 何を言ったの?

越智君に、しぃちゃんは何を言ったの?

あたしはしぃちゃんの敵意に満ちた視線が怖くて、大ちゃんのジャージの裾をぎゅっと掴んだ

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