君を愛す ただ君を……
顔を見ただけじゃ、大ちゃんの心まではわからなかった

何を考えて、どんな真意で言葉にしているのか

あたしには見当もつかない

逆に、越智君は大ちゃんの言わんとしていることが理解しているみたいで、意味ありげな笑みを浮かべて、大ちゃんを見ている

男同士で、わかる内容を話したの?

大ちゃんの言葉に、何かキーワードみたいなのがあったの?

「私、絶対に負けないから」

キッとあたしを睨んだしぃちゃんが、スタスタと教室に戻って行った

歩き去るしぃちゃんの背中を数秒間だけ見つめた越智君が、すぐにあたしたちに視線を戻した

「岡崎先生って損な性格って言われるでしょ?」

越智君が、眉をひくっと持ち上がると質問した

大ちゃんは、肩を竦めると苦笑してみせた

「君たちに誤解を与えたまま、陽菜を奪う方法もあったのに…って言いたいのかな?」

大ちゃんが、一段階段を降りる

越智君が、階段を3段上に上がった

二人が向き合い、そして笑いあう

まるで何か通じ合うものがあるかのように、二人で拳を軽くぶつけ合った

「涼宮を強引にモノにしようと思うなら、今がチャンスだった…はずなのでは?」

え?

あたしは越智君の言葉に、目を丸くした

「まあ、チャンス到来ってシーンだったよね」

大ちゃんが、明るい声で返事をする

「どうして、自らチャンスを棒に振ったんですか?」

「答えは簡単だよ。僕の中の優先順位の問題。自分の想いと陽菜の笑顔と…天秤にかけるまでもない。君だって、本当は僕と陽菜がくっついていて苛々しているはずなのに、何でもない振りをして、さらに理解している男のように振る舞ったじゃない。それと一緒だよ」

大ちゃんが、越智君の肩に手を置いてにっこりと笑った

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